合宿中に親に頼んだ番組録画の成功率は、ジャンケンより低いと思う。
今週のお題は「もう一度見たいドラマ」とか。ある意味で、伝説になったドラマが脳裏を過ぎる訳であるが。
我々が幼かった昔において、テレビドラマというのは、なかなかハードルが高いものであった。
今でこそ『ネットさえあれば月額見放題』という、当時の人々からすればお大尽のような環境が当たり前となっているが、当時はまずドラマを見る、という行為自体に超えるべき障害が多かったと記憶している。
まず放送時間である。小学生位の子供は21時には寝るべし、という教育が幅をきかせている時代のことである。
『見たいドラマがあるから21時まで起きててもいい?』という発言は『喉が渇いたから冷蔵庫の缶ビール飲んでもいい?』くらいのレベルで扱われていた。
就寝時間が寛容な親だとしても、次にはチャンネル権という熾烈な争いが控えている。
父親や母親が仕事や家事を終え、リビングで落ち着く時間帯というのがちょうどドラマの時間である。
同じドラマが好み、という奇跡でもなければ、仕事や家事をする父母のチャンネル権が優先されるのは当たり前のことだ。
加えて爺ちゃん婆ちゃん、兄弟姉妹がいたらさらに状況は混迷し、概ね大河ドラマなどのNHK番組に落ち着くこととなる。
だったら録画すればいいのに、という発言をする者は、当時を知らない勝ち組世代だろう。
当時の録画機能は笑える位に味がある(無能)なものがほとんどで、2番組録画なぞは当然ない。というか『裏番組録画』すらハイテクな時代である。
ごく一般的な録画機の場合、ドラマがスタートする頃にテレビの前で正座して録画ボタンを押すという、「そんならもうライブで見ろよ」という状況となる。
録画予約をしていたら野球などで放送時間が押して冒頭15分で終わる、というのも良くある話だった。
さらに言うなればドラマ一話を録画するのにカセットテープ1個が必要となる、というのもハードルが高い。
その大きさを今の子に分かるように言うと、なかなかのサイズの筆箱くらいの大きさだ。
ワンシーズン録画したらそれが10個以上積み上がることとなり、たちまちこころと棚が折れる。
結局一話でも見逃すと、再放送などを待たなければならず、シーズン全てを見るというのは初期のマリオ位の難易度があったのだった。
だが、そもそも再放送すらしてくれないドラマというのもある。
昔、キムのタクさんが主演するドラマで『ギフト』というのがあり、当時のジャニーズ人気もあって、私のような情弱でも視聴していたドラマである。
毎回親に録画して貰い、欠かさず見ていたのだが、親というのは必ず録画をミスるという生まれながらの欠陥を抱えて生きているため、ご多分に漏れず私もその被害にあった。
仕方なく再放送を待つ訳だが、待てど暮らせどその気配がない。なぜか。
実はキムのタクさんがドラマ内でイカした手捌きでバタフライナイフを扱うシーンがあるのだが、とある人命に関わる刃傷沙汰を起こした犯人が、「このドラマの影響です」と述べたのである。
今風にいえば、Twitterに炎上動画を上げて逮捕された者が「人気ユーチューバーを真似ました」といったようなものか。
お陰でドラマの再放送はおろか、レンタル場ビデオ店にも並ぶことはなく、今持って私ははなしのオチを知らない訳である。
多分、今ならばドラマの続きも入手できるのかもしれないが、今は今で、見ているドラマもある。
20年後くらいにSMAPの皆様が再結成したら、記念に再放送される可能性もなくはないので、私としては大人しくNHK大河ドラマを見ながら、再結成から待っていきたいと思う所存である。